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Books for Teachers

学校教育をよりよくしたいと思う方、そして現場でがんばる先生たちにおススメの本を紹介します。

PDCAよりOODA(ウーダ)だ!

米国式 人を動かすマネジメント (紹介:妹尾昌俊)

米軍式 人を動かすマネジメント──「先の見えない戦い」を勝ち抜くD-OODA経営

米軍式 人を動かすマネジメント──「先の見えない戦い」を勝ち抜くD-OODA経営

 

帯にひかれて購入した。「PDCAよ、さらば これからはOODAだ!」。PDCAはPlan Do Check Actionの略で、企業だけでなく、行政や学校でも推奨され、現場でもかなり意識されつつある(イヤイヤかもしれないが)。しかし、計画はつくったもののうまく進まない、どこか変な評価をしている感じがする、PDCAサイクルと言いながらぜんぜん好循環にならない、といった不満をもった経験は、だれもがあるのではないだろうか?

問題の多いPDCA

本書は、そんなPDCAに疑問を感じる方にはうってつけだ。筆者はPDCAを否定しているわけではないが、日本企業の多くは、「過剰計画、過剰管理」になっていて、PDCAがうまく機能していないのではないか、と指摘する。

次の図(本書p25)は典型的なPDCAの失敗例を要約している。「あっ、うちもそうだな」と思われる方も少なくないのではないか?

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PDCAの最後に実行「A: Action」された結果は、十分に吟味、検証されることなく、次のPに反映されずに終わることが多いようです、なぜなら、みんな次の計画(P)をつくることに精一杯で、過去を振り返っている余裕がないからです。そこでは、過去の反省を活かすことなく、毎度のように「対前年比」で計画がつくられます。(p.25,26)

この箇所は、僕にとっても耳の痛い話だ。これまで国や自治体の計画づくりや行政評価、それから学校評価について数多くの現場を見てきた(自分が当事者のときもあった)。そこでは、引用した箇所の指摘がかなりよく当てはまる部分もあると痛感している。いろいろな背景があるが、計画をつくることに一生懸命で、あとのことに力が割けていないことや、評価して改善策を考えても、もう遅いという例がかなりある。

企業であれ、行政であれ、学校であれ、PDCAには苦労しているのが多いようだ。あなたの組織ではどうだろうか?

 

OODAってなに?

本書で提案するのはOODA(ウーダ)である。OODAとは、Observe(観察)→Orient(方向づけ)→Decide(決定)→Act(実行)→Observe・・・というモデルである。

たとえば、デートでは、PDCAよりOODAだという箇所がわかりやすい(p.43-44)。初めてのデートであれば、レストランをリサーチして、どこに行くか目星をつけておいたり、予約をしておくことも多いかもしれない。しかし、そのプランにこだわってはいけない。相手をよく観察して、昼にどんなものを食べたかや、今の空腹の具合、また今日は何時ごろまでに帰りたいかなどの状況を考慮したうえで、予定の店のままでよいのか、変更したほうがよいのか判断する。これがObserve(観察)→Orient(方向づけ)→Decide(決定)→Act(実行)というわけだ。

なるほど、と思った方も多いと思う。たしかに、実生活でも、企業経営でも、行政でも、学校でも、事前に計画通りにいかないこと、臨機応変の対応が求められるシーンは非常に多い。

本書のタイトルにあるとおり、OODAの考え方は米軍が発祥で、もともとは航空機の戦闘に由来する。つまり、事前の計画どおりには物事が進みにくく、敵や周りの状況に応じて判断して実行する必要がある局面でのことだ。

PDCAの問題のひとつは、やや独りよがりなところがあり、計画を立てれば、(相手の動きや周りの状況がどうであれ)実行できるという楽観論に立つ傾向がある点かもしれない。先日紹介した『なぜ、わかっていても実行できないのか』という本の内容にも通じる話だと思う。

授業や学級づくりはOODAが有効?

学校の先生にとっては、このOODAは意識している、していないにせよ、日常的な思考に近いと思う。子どもを相手にしている以上、教室では予想外のことがバンバン起こる。子どもの様子をよく観察したうえで、方向づけをして、事前に練っていた進行案や発問は軌道修正しながら進めていくのが一般的な授業だろう。

学校でPDCAやマネジメントという考え方が根付きにくい背景のひとつがここにある、と僕は見ている。一番大事な授業がなかなか計画通りにはいかない世界だから、学校経営や分掌の運営でも、どこかPDCAにはなじにくい傾向がある。

OODAはPDCAと対立する概念ではない

しかし、ここで注意が必要。物事、0か100かの世界ではない。航空機の戦闘では事前の計画がほとんど意味のない局面もあるだろうが、子どもを相手にしている教育という世界、あるいは税金を扱っているパブリックな組織では、なんでも臨機応変、その場対応というのも危うい。

本書では、いかにもPDCAはダメダメでOODAにするべしという主張のようにも読めるのだが、最終章でそこを注意している。

もともとOODAはPDCAと対立する概念ではありません。・・・(中略)・・・すべてのビジネスに言えることですが、しっかりした計画を立てることはとても大切。しかし、それだけではダメだというのが、この本の主張です。(p.214,215)

その通りで、PDCA信仰というか、なんでも計画通りにやろうとしたり、あるいは指標を設定して評価していればそれで安心するといった柔軟さを欠いたPDCAの運用にはよくよく注意が必要だが、PDCAの考え方自体は大切にしたい。

たとえば、次期学習指導要領改訂でも「カリキュラムマネジメント」がひとつのキーワードになっている。次期指導要領を待たずに今でも大事な考え方なのだが、カリキュラムマネジメントの考え方の中核のひとつは、教育活動を場当たり的ではなくて、教育課程を通じて計画的に進め、その結果をしっかり反省して次に活かすというPDCAの考え方がある。

つまり、個々の授業や学級運営、生徒指導などではOODAの発想が親和的な場面も多い。しかし、同時に、それらの実践をしっかり反省して、計画立てて、そして組織的に物事を進めていこうとするPDCAも同時に必要というわけ。これは学校だけではなく、行政や企業にも当てはまる。こうした視点で、本書も読んでもらえると、より学校現場などにも役立つと思う。

マイクロマネジメントになっていないか

もう一点、先に紹介したPDCAの図のDoの箇所にあるように、マイクロマネジメントといって、細かいことを管理しようとし過ぎる傾向も、多くの組織で見られることだ。これは、DoだけでなくCheckでもよく起こる。

管理職としては、自分の責任が問われかねないので、不安でもあり、ついつい細かい点に目が行く。細かく指示したり、ともかく数値目標をたくさん立ててチェックすれば評価した気になっていたりするのは、悪しきPDCA信仰かもしれない。

「神は細部に宿る」という言葉もあり、一概に細かいことをむげにはできないけれど、マイクロマネジメントが行き過ぎると、管理される側は、自分の頭で考えようとせず、言われたこと、管理されることだけをやっていればよいというふうになることもある。

本書で紹介されているのは、OODAに加えて、「ミッション・コマンド」という考え方だ。これは、「指揮官が大枠だけを定め、実行については部下に一任する」(p.131)方法を指す。つまり、何を目指すのかという任務の目的・目標はしっかり共有するが、実行については臨機応変の対応が必要なので権限委譲する。

この考え方も、企業経営や行政、学校にも参考になると思う。学校などでは、権限委譲はされているが、ミッション、目的・目標の共有が甘いままと僕は観察しているが、その話はまた今度に。

 

以上紹介した箇所のほかにも本書にはいろいろな事例もあって、軽く読めるが、あちこち参考になると思う。

ともあれ「PDCAよ、さらば これからはOODAだ!」という帯はミスリードであり、「PDCAだけで満足するな、OODAもだ!」のほうが正確。まあ、帯というのはキャッチーなものなので仕方ないんだけど。

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妹尾 昌俊(せのお まさとし)

学校マネジメントコンサルタント、Books for Teachersの世話役、4人の子育てに修行中。野村総合研究所を経て、フリーに。教職員向け講演・研修などを行っている。

著書『変わる学校、変わらない学校-学校マネジメントの成功と失敗の分かれ道』では、活性化している学校とそうではない学校との違いを分析、今後の学校づくりの方向性を提言。

文科省の有識者会議やフォーラム、教員研修センターのマネジメント研修などでも講師を務める。

ブログ:

http://senoom.hateblo.jp