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Books for Teachers

学校教育をよりよくしたいと思う方、そして現場でがんばる先生たちにおススメの本を紹介します。

高大接続改革とアクティブラーニング

教育政策 教育全般 伊藤智章

高大接続改革 (紹介:伊藤智章)

高大接続改革: 変わる入試と教育システム (ちくま新書)

高大接続改革: 変わる入試と教育システム (ちくま新書)

 

最近、うんざりするほど耳にする「アクティブラーニング」という言葉。本書は、なぜ「アクティブラーニング」が必要なのか、大学入試が改革され、センター試験が廃される見込みが立った中、これからの教育はどう変わっていくのかを豊富な事例をもとに解説している。

教育システムの制度疲労とアクティブラーニング

よくあるアクティブラーニング礼賛本と違うところは、現行の教育システムが制度疲労を起こしているところをこれでもかというくらいに示していること。「日本人のキャリアや人生は、15歳の時の能力で振り分けられた進学先の高校でほぼ決まってしまう」と身も蓋もない解説で、「最終学歴」「学校歴」が支配する現状を示した上で、シンデレラの結末よろしく「王子様と結婚(東大合格)」してめでたしめでたし・・・というわけでもない現実を出して問題提起をしている。


東大を頂点とする「いい学校」を出れば、就職先の選択肢が広がり、福沢諭吉が「学問のススメ」で書いた「貴なる仕事」につける可能性は高いが、そのままずっと安泰というわけでもないことは、近年のAIによる仕事の自動化や過労死の問題を見ても明らかである。

逆に、「偏差値の低い学校」だからということで、高校生に小中学校の復習(暗記のやり直し)だけをやって単位を与えて「高卒」として送り出したとしても、厳しい職場環境で継続的に働き続けることができるかというと、そんなことはない。しかも、最近はそうした高校生としての学力や素養をほとんど身に着けていない生徒でも楽勝で入れるFランク大学が多数あり、そうした大学でどのような教育を行っていくのか(あるいは現実に目を背けたまま旧来の”大学の講義”をするだけで座して死を待つか)、岐路に立たされている。

すでに日本人の一人当たりの平均所得は下がりつつあり(全体が貧しくなったというよりも、底割れが激しいとみられる)、現状を無視した高校教育、大学教育が放置されればいつか日本でも「トランプ現象」のような中低所得層の反乱がおきるかもしれない。

 

アクティブラーニングの本質とは?

そうした「学校の外」の環境に対する認識を披露してもらうと、現場の教師たちの「アクティブラーニング」論がいかに教育技術論、重箱の隅論に偏っているか、自省を含めて考えさせられる。アクティブラーニングの本質は、「授業をいかにして変えるか?」ではなく、「授業をしなくても自分で学べる」人間の育成である。

ただ、それは「自学自習」をさせればいいのではなく、今、世の中にどんな課題があるのか、自分の目標の実現のためには何を学ばなけばならないのかをはっきりさせ、そのためのステップを明示することにある。時間割や教科書など、ある程度型にはめなければならないところがあるにしても、少なくとも「話し合い学習」や「協働学習」といった目先の方法論を議論するものではない。

高校は高校、大学は大学の持ち分があるとは思うが、両者をつなぐ「入試」の変革を起爆剤にして両者がどう変われるか(あるいは変われないところはどうなってしまうのか?)

そのあたりは自分で考えるしかないのだが、一定数の学校が淘汰されることになるだろう。それは「底辺校」「Fランク」だけとは限らない。むしろ、「生き残り」をかけて、目先の方法論としての「アクティブラーニング」の導入を強制しようとする中堅校あたりの混乱が予想される。すでにこうした学校では、圧倒的多数が「AO・推薦入試」で早いうちに大学合格を決めてくる生徒が占めており、センター試験をはじめとした「テストに出るからしっかり覚えろ」的な指導は既に崩壊しつつある。また、そういう入試で半分以上の学生を集めた大学も同様である。そうした現状を「嘆かわしい現実」と見るか、「時代を先取りしている」と見るかで変わってくると思う。

教員は学び続ける姿勢を示せているか?

今のところ、一部の「意識の高い」教員による個人芸的なものに収まってしまっているアクティブラーニングであるが、本来的にはそれは「技術」でもなければ「芸」でもない(そうであってはならない)。まずは教員自身が「教育のプロ」として自ら「学び続ける」姿を見せ、世の中の問題に対して常にアンテナをはることが重要だと思った。

「最終学歴よりも最新学習歴」とは著者が登録商標にしたいというほどの名文句だが、まさしくその通りだと思う。まずは隗より始めよ。アクティブラーニングを普及させたいなら、まずは自分が常にアクティブに学び続けること、これに尽きると思った。  

 

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伊藤 智章(いとう ともあき)

静岡県立高校教諭・日本地図学会学校GIS教育専門部会主査。NPO法人「伊能社中」ティーチング・フェロー。2016年9月に出した『地図化すると世の中が見えてくる』が人気。ほかに『いとちり式 地理の授業にGIS』。教育現場のニーズを踏まえ、「ほぼ無料」「教科書準拠」をモットーに、デジタル地図を使った教材と、作り方のノウハウを多数発表している。

ブログ:

http://itochiriback.seesaa.net/