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Books for Teachers

学校教育をよりよくしたいと思う方、そして現場でがんばる先生たちにおススメの本を紹介します。

コミュニティ・スクール ──地域とともにある学校づくり

教育全般 教育政策 栁澤靖明

コミュニティ・スクール──地域とともにある学校づくり(紹介:栁澤 靖明)

コミュニティ・スクール―「地域とともにある学校づくり」の実現のために

コミュニティ・スクール―「地域とともにある学校づくり」の実現のために

 

 コミュニティ・スクールとは、文部科学省によれば「学校と保護者や地域の皆さんがともに知恵を出し合い、学校運営に意見を反映させることで、一緒に協働しながら子供たちの豊かな成長を支え『地域とともにある学校づくり』を進める仕組み」である。

 そして、同省のWebサイト(http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/community/)には、さらに詳しい説明が書かれ、パンフレットや手引き、全国の実践事例集なども掲載されている。しかし、これだけの情報を整理するのはなかなか困難である。

そこで、本書の活用をすすめる。著者は、「全国コミュニティ・スクール連絡協議会事務局長」でもあり、コミュニティ・スクールを優しく解きほぐしている。まさに、コミュニティ・スクールの入門書であり、「基本書」でもあると言えるだろう。

コミュニティ・スクール導入の動き

本編に入る前に少しだけコミュニティ・スクール(学校運営協議会が置かれている学校)についての動きをまとめておく。

文部科学省のWebサイトによると2004(平成16)年より17校から始まった計画は、2016(平成28)年の最新データでは2,806校がコミュニティ・スクールとして指定を受けているとある。その背景には国の政策が後押ししている。

まず、2004(平成16)年に「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」が改正され、〈学校運営協議会〉設置の条文が第47条の5に追記された。そして、2013(平成25)年に閣議決定された「第2期教育振興基本計画」で、すべての公立小中学校の1割である約3,000校を指定するという目標が掲げられた。

さらに、2015(平成27)年に出された中央教育審議会の答申「新しい時代の教育や地方創生の実現に向けた学校と地域の連携・協働の在り方と今後の推進方策について」によると、すべての公立学校がコミュニティ・スクールを目指すべきであるという提言が書かれ、文部科学省は昨年から更なる推進に向けた取り組みが全国各地でおこなっている。

──とあらば、全国の学校がコミュニティ・スクールとして指定される日も来るかもしれない。少なくともここ数年の飛躍は確実にある。そのとき、ガイドブックとなるのが本書であろう。

著者は本書の活用に関して「コミュニティ・スクール試食のための『レシピ』としてご活用していただければ幸い」と述べている。それでは、本書の構成に従って少しだけコミュニティ・スクールを試食してみよう。

 

本書の構成:コミュニティ・スクールの全体像をつかむ

まず、全体像の紹介である。第1部は、「保護者・地域による学校運営参画の意義と現代的特質」として、おもにコミュニティ・スクールの外側(制度論)が中心に述べられている。続き、第2部では、「調査から考察するコミュニティ・スクールの実態」として、おもに内側(実践論)が中心となっている。そして、第3部にはQ&Aが掲載されている。

著者が「試食のための『レシピ』」と述べるだけあり、第1部から順に読み進めることで、コミュニティ・スクールとは何か、ねらいや意義、課題などが整理でき、実際に指定を受けるにあたりどんな準備が必要なのか、どのように運営していけばよいのかなどにも答えてくれている。

また、「本書の特長」として帯に書かれていることを引用しておく(裏表紙なので書影には映らないのが残念なので)。

本書の特長

  • コミュニティ・スクールの全体像がビギナーにも理解できる最良の実用書。
  • 図表の多用によるビジュアル化。
  • 筆者の調査をもとにした平成27年度までのコミュニティ・スクールの現状と成果を掲載。
  • コミュニティ・スクールにおいてよく聞かれる疑問をQ&A形式で、【基本編】【委員編】【運営編】【準備編】に分けて整理。 

この文章を読むだけでも、これから指定を受けるという学校の担当者は読まずにはいられない気持ちの高ぶりを感じるだろう。学校の管理職はもちろんのこと、コミュニティ・スクール担当者や委員に委嘱された方々も読んでおいても決して損はない1冊だ。

コミュニティ・スクールの役割

では、実際に指定されたら何をするのか、かんたんに記しておく。本書から引用すれば以下の通りとなる。

コミュニティ・スクールは、学校評議員制度を発展させた仕組みとして2004(平成16)年に導入された。学校評議員が「校長の求めに応じて意見を述べることができる」のに対して、コミュニティ・スクールに置かれる学校運営協議会は、次のような権限を有する仕組みとされた。

①校長の作成した学校運営の基本方針を承認すること
 (以下、「承認」という)

②教育委員会や校長に学校運営に関して意見を述べることができること
 (以下、「運営意見」)

③教職員の任用に関して任命権者に意見を述べることができること
 (以下、「任用意見」)

必ずやらねばならないことは①の「承認」であり、②と③は「できる」規定である。しかし、著者の調査によれば、②の運営意見に関しても全国では9割5分程度の実施率であり、③に任用意見に関しても7割5分程度の実績はある。学校運営協議会の委員になると、学校と以上のような関りを持つことができる。委員の平均人数は14.6人とあり、学校関係者や教育局関係者の席も多いが、法律では「地域住民、保護者、その他教育委員会が必要と認める者」となっており、この他にも卒業生などの席を用意している場合もある。

委員に委嘱されると学校の先生の人事に関しても意見を述べることができる制度である。学校運営の基本方針を承認することや学校運営に意見を述べることに対しては、想像がつくと思うが、教職員の任用に関してはどんな意見が出て、どのように反映されているのか、興味がある方も多いだろう。その疑問や実態にも本書は答えているので参考にしてみてほしい。

懸念から期待へ

これから広がりをみせるとはいうものの、実際にはまだ1割程度の学校が指定されているだけである。しかも、その実態はなかなか見えてこないのが現状であろう。

そのため「懸念」が生まれているのも理解はできる。「地域のエゴが学校運営に支障をきたすのではないか」、「派手なパフォーマンスが横行することを危惧する」などというような現場の意見もあるそうだ。しかし著者の調査によれば、このような「懸念」は、実際に取り組みが始まると、多くの場合は明確に薄れていくことも明らかになっているという。

そして著者は、「コミュニティ・スクールに対する関心が少しでもあれば、『懸念』よりも、『よい学校』への『期待』に目を向けてみることが大切だ」と述べている。

このように、まだ見ぬ地にある9割の学校に対する「懸念」を払しょくさせるためにも本書はある。なぜならば、著者は中央教育審議会(地域とともにある学校の在り方に関する作業部会)の委員経験、文部科学省委託調査研究(コミュニティ・スクールの推進に関する教育委員会及び取組の成果に関する調査)の調査委員経験などがあり、コミュニティ・スクールの現場にもっとも足を運んでいる有識者でもあり、その見地からコミュニティ・スクールを理論と実践の双方から向き合ってまとめている1冊であるからだ。

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栁澤 靖明(やなぎさわ やすあき)

川口市立小谷場中学校事務主任。著書『本当の学校事務の話をしよう: ひろがる職分とこれからの公教育』では、事務職員という立場から学校の現状やこれからの公教育の在り方を提言。

「事務職員の仕事を事務室の外に開く」をモットーに、事務室だより『でんしょ鳩』などで、教職員・保護者・子ども・地域へ情報を発信。就学援助制度の周知にも力を入れて取り組んでいる。
さらなる専門性の向上をめざし、大学の通信教育課程で法学を勉強中。ライフワークとして、「教育の機会均等と教育費の無償性」「子どもの権利」を研究。
共著に『保護者負担金がよくわかる本』(保護者負担金研究会=編著、学事出版)、『つくろう! 事務だより』(事務だより研究会=編著、同)などがある。