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Books for Teachers

学校教育をよりよくしたいと思う方、そして現場でがんばる先生たちにおススメの本を紹介します。

心を動かすデザインの秘密

社会を見る目 渡辺光輝

心を動かすデザインの秘密 (紹介:渡辺光輝)

心を動かすデザインの秘密 認知心理学から見る新しいデザイン学

心を動かすデザインの秘密 認知心理学から見る新しいデザイン学

 

 デザインはファッションだけじゃない

「デザイン」という言葉にどんなイメージがありますか?
洋服のデザインが素敵!とか、この車のデザインがかっこいいとか、「デザイン」というのはどちらかといえば見た目のカッコよさとか美しさといった面が強調されやすい言葉だと思います。

デザインとは人工物を作り上げるプロセス

しかし、「デザイン」の本来の意味はそうではありません。
人が作り上げたもの(人工物)すべてを作り上げるプロセスが「デザイン」と呼ばれます。
洋服や車はもちろん、建築、テレビやパソコンのような機械、おはしやスプーンのような道具、そして言語などの「記号」も、すべてこれらは自然に生まれたものではありません。何らかの人の手がかかり、作り手の思いや感性がこめられているものなのです。つまり「デザイン」されて作り上げられたものなのです。

認知心理学によって解明されつつあるデザインの秘密

近年、認知心理学の発展により、こうしたデザインされた人工物がなぜ魅力的なのか、どのように感性を揺さぶるのか、優れたデザインとはどのようなものなのか、ということに関する研究がかなり進んできました。
そんな「デザイン」の原理や理論を、初学者にもわかりやすく述べている本が、この「心を動かすデザインの秘密」という本です。

筆者は荷方邦夫さん。
金沢美術工芸大学でデザイン学を教えている先生です。
認知心理学というアプローチでデザインの世界を解明しようと研究をされています。

 

内容紹介と目次(アマゾンから転載)

なぜ、これを買ってしまうのかーー
その理由は「デザイン」にあった! 人とモノとの関係をとらえ直し、「認知デザイン学」の可能性を切り拓く入門書。
“人はどんなものに魅力を感じ、何に感動するのか"
“デザインのアイデアはどうやって生まれるのか"
“使いにくいデザインやありふれたデザインがなぜできてしまうのか"……
★「人間中心のデザイン」って何だろう? デザイン化された世界の現実と未来について、「わかりやすさ」を追究する認知心理学者が考察します。
★D. A. ノーマン(『誰のためのデザイン?』)、R. ベルガンティ(『デザイン・ドリブン・イノベーション』)など、著名な研究者の理論もやさしい言葉に置き換えて解説します
★デザインの現場に立つクリエイター、売るためのデザインに頭を悩ますマーケッター、そして「良いデザイン」を求めるすべての人におすすめします。

目次
序 章 心ときめく日常生活の心理学
第1章 魅力あるもののフィールドウォッチング
第2章 感性と感情の認知科学
第3章 感じることはわかること
第4章 経験と物語が支える魅力
第5章 デザインの現場では何がなされているのか
第6章 魅力・感動デザインの光と影
第7章 実践から理論へ
最終章 デザインとデザイン学の向かう先へ

人はどのようなものに惹きつけられるのか?

あなたのお気に入りのものは何ですか? あなたは今日着ていく服はどのような基準で選びましたか?
人を引き付けるものは、万人受けするものとは限りません、その人の感性や価値観に大きく左右されます。
「デザイン学」でも、もちろん「万人受けするモノ」を作り上げることを目的とするのではなく、「人が惹きつけてやまないモノ」とはどのようなデザインの原理で作られているのかをまず知ろうとします。
そのひとつめの要素が「愛着」です。
考えてみれば「愛着」とはとても不思議な言葉です。人は愛してやまないものにはいつまでも、肌身離さずそばに置いておきたくなるものです。(自分も、大好きな本をいつも枕元に置いておかないと落ち着いて寝れないという習性をもっています。)
そういう、好意とか愛着というものが「デザイン」の根っこの部分にはあります。
女子高生がノートやプリクラを「デコ」るのも、おじいさんが庭で盆栽を育ててめでるのも、その本質は変わりません。
デコったり、カスタマイズすることで、「自分だけのモノ」となっていきます。その「自分らしさのあかし」が愛着や好感を生み出すデザインの原理となります。

感性や人間性への洞察が「デザイン学」

愛着や好感のような「感情を伴う認知」を認知心理学では「温かい認知」と呼んだりします。
同じノートでも、自分がデコったノートはそれだけで持っている人の感情を揺さぶる、魅力的なデザインになります。つまり「温かい認知」を呼びさまします。
「魅力」をはじめとするさまざまな感覚には、このような温かい認知を土台としているのです。
さて、ここからが「デザイン学」の真骨頂。この温かい認知を認知心理学では様々なキーワードで解き明かしています。

キーワードを挙げてみましょう
・好意的感情の増加
・関与の継続
・記憶成績の高進
・快刺激の活性化
・魅力条件理論の9つの要素
・エクマンの6つの表情
・シュロスバーグの感情の次元
・単純接触効果
・知覚的流暢性誤謬帰属説
・熟知性と新奇性
・最適複雑性モデル
。示差性と注意の関係
・アフォーダンスとシグニフィア
・メンタルモデル
・ヒューリスティック
・コモディティーと付加価値
・経験価値
・ノーマンのデザイン理論ー本能・行動・内省
・ナラティブ・ストーリー
・デザイン・プロセス
・ベルガンティーのデザイン理論

などなど。これだけ列挙すれば、おおー、すげーと思うことでしょう。
一つ一つを解説してしまうと、それこそ「デザインの秘密」がネタばれしてしまうので書きません。
なにやら難しい言葉がたくさん並んでいるように見えますが、実はこの本自体がとっても「デザイン」的に工夫が凝らされていてわかりやすい構成なのです。それがこの本の最大の魅力といっても過言ではありません。身近な例を取り上げ、その例からデザインの秘密を解き明かす、というように、どんな人でも読み進めていくうちにこれらのキーワードが頭に入っていくようなからくりになっています。きっと高校生くらいからでも読めると思います。

ここまで読んで下さった方は、もうお分かりのように、「デザイン」とは決して芸術家やファッションデザイナーだけの話ではありません。
人が何かを作ろうというとき、何かを伝えようとするとき、いかにして相手に印象深く伝えるか、どうやって好感を持ってもらうか工夫をしていくものです。その秘訣やプロセスを知りたいと思う人にとっては、目からうろこの知見が、これでもかといわんばかりに述べられています。
まずこの一冊を手に取って見ることを強くおススメします。無から有を生み出すどんな人間も、すべからく「デザイナー」なのです。