Books for Teachers

学校教育をよりよくしたいと思う方、そして現場でがんばる先生たちにおススメの本を紹介します。

My Best Books 2016

Books for Teachersレビューアーの今年読んだベスト本

Books for Teachersに訪問いただき、ありがとうございます。代表の妹尾です。
10月に友人を誘って始めたこの取組も、多くの方に応援していただき、うれしいです。
ちょくちょくアップしていきたいと思いますので、今後もよろしくお願いします。

今年もあと数日になりました。今年紹介できた本は約30冊。一部重なりますが、レビューアーから、今年読んだ本のなかから、3冊ずつ紹介してもらいました。

※ Books for Teachersではレビューアーになっていだける方など協力者も募集中です!

My Best Books 2016(斎藤 早苗)

授業の話術を鍛える(野口芳宏 著)

教師の本分である「授業」について書かれた本は、世に数多ある。この本はその中でも「話術」に焦点をおいて書かれているのだが、「話すこと」というのは「言葉」にこだわることであり、いかように伝えれば子どもの心に届くのかという授業の基本を教えてくれている。

こんな子どもに育てたい、という目標や願いがあり、授業はそれを実現するための大切な手段であるが、そこで重要な役割を持つ「話す」ということを、実は多くの教師はきちんと学んでいないのではないだろうか。

「話術」という技術は、教師でなくても大きな武器になると感じた一冊だった。

名著復刻 授業の話術を鍛える

名著復刻 授業の話術を鍛える

 

 

アクティブ・ラーニング時代の教師像堀裕嗣・金大竜 著

「授業づくり」「学級づくり」「力量形成」という3つのカテゴリーで、往復書簡を交わしながら、著者がそれぞれの考えや思いを述べている。やり取りの中で議論が深まっていく様子に惹きつけられた。

これまでの実践を振り返り、これから自分はどうあるべきなのかという深く大きな問いを持っている金先生の悩みや迷いが率直に語られる。それに対して、堀先生は答えを示すのではなく、金先生が自身で思考を深めていくように導き、寄り添っている。

人の成長とそれを支えるということについて、深く考えさせられた一冊だった。

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学校でしなやかに生きるということ石川晋 著

著者の石川先生は「教師としての視座」と「保護者としての視座」の両方を持って、本書を書かれている。

多くの保護者は自分の子どもを中心とした視界しか持たない。
この本から、公立中学校が置かれている状況や、今学校で起きていることを教えてもらい、視界が広がった。

淡々と書かれた文章にとても共感でき、現状をきちんと踏まえたうえで、これからの教育の目指すべき方向や、子どもに付けてもらいたい力は何なのかを考えさせられる一冊だった。

学校でしなやかに生きるということ

学校でしなやかに生きるということ

 

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My Best Books 2016(伊藤智章)

家康、江戸を建てる(門井慶喜 著)

江戸を作るという壮大なプロジェクトの中で腕を振るった職人達、壮大なプレッシャーを受けながらも采配をする息子、秀忠の物語。

家康、江戸を建てる

家康、江戸を建てる

 

 

豊田章男が愛したテストドライバー(稲泉連 著)

トヨタの社長とチーフドライバーの奇妙な師弟関係。

孤独な世襲のトップは技術屋にメンターを求め、職人肌のドライバーはプリンスに会社の未来を託す。そして突然の別れ。

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本屋さんのダイアナ(柚木麻子 著)

「本好き」という共通項を持ち、全く対照的な女の子(お嬢様とヤンママの娘)の小学生から大学卒業までを追いながら、女の子の進路と自立を活写。

「赤毛のアン」をオマージュして現代劇に仕上げた快作。娘がいる父親、思春期の女子生徒の扱いに悩む青年教師はMustで読むべし。

本屋さんのダイアナ (新潮文庫)

本屋さんのダイアナ (新潮文庫)

 

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My Best Books 2016(栁澤 靖明)

高校生からの法学入門(中央大学法学部 編)

中央大学に籍をおいている身としては読まねばならぬか──。という気持ちで買ったが、これが面白い。
全編を通して、法律を高校生向けに解説するための噛み砕き方が半端ではない。
特に「おまえのものはおれのもの、おれのものはおれのもの」というジャイアニズムを持ち出し、民法の所有権論を解説したくだりはおもしろく分かりやすかった。
中学生でも読めると思う良書である。

高校生からの法学入門

高校生からの法学入門

 

 

教師の心が折れるとき(井上麻記 著)

この本は、公立学校共済組合が推薦する本でもある。

2015年に義務化されたストレスチェックだが、事業者がおこなうもの以外でもセルフストレスチェックができるシートも掲載されている。

毎年、7校に1人の教員が精神疾患で休業するという異常な時代が訪れている現代において、本書は保護者対応のポイントにまで臨床心理士が応えている先生専用のメンタル本である。

教師の心が折れるとき: 教員のメンタルヘルス 実態と予防・対処法

教師の心が折れるとき: 教員のメンタルヘルス 実態と予防・対処法

 

 

ゲイのボクから伝えたい 「好き」の?(ハテナ)がわかる本──みんなが知らないLGBT(石川大我 著)

「男が女を好きになる、女が男を好きなる」これは当たり前ではない。
LGBTのことが少しわかる入門書である。
中学生くらいから、ココロの性と身体的特徴としての性、そして恋愛対象としての性に違和感が出る子どもが多いという。たとえば、ココロは男性で身体的特徴は女性、そして恋愛対象は女性という場合など複雑に混ざり合うことがある。

30人に1人とも言われているLGBT。そうクラスに1人はいるかもしれない。そこで、学校の先生に気を付けてもらいたいことも書かれている。そこだけでも現場の人間は読んでおくべきだと思う。

ゲイのボクから伝えたい 「好き」の?(ハテナ)がわかる本 みんなが知らないLGBT

ゲイのボクから伝えたい 「好き」の?(ハテナ)がわかる本 みんなが知らないLGBT

 

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My Best Books 2016(渡辺光輝)

「こつ」と「スランプ」の研究 身体知の認知科学 (諏訪正樹 著)

身体感覚などのの暗黙知を、どう言語化して自分にとっての実感の伴った知識として落とし込めるか書かれた本。授業づくりに大いに参考になった。

「こつ」と「スランプ」の研究 身体知の認知科学 (講談社選書メチエ)

「こつ」と「スランプ」の研究 身体知の認知科学 (講談社選書メチエ)

 

 

戦時期日本の精神史―1931‐1945年(鶴見俊輔 著)

鶴見俊輔さんの本で一番面白かったのが、上野千鶴子さん、小熊英二さんと対話した『戦争が遺したもの』なんだけど、今年読んだものとしてはこの一冊を推す。

なぜ日本が無謀な戦争に突き進んでいったのか、それにはどのような日本人の思考や発想のパターンがみられるのか、現代日本への強烈なメッセージともなっている。

戦時期日本の精神史―1931‐1945年 (岩波現代文庫)

戦時期日本の精神史―1931‐1945年 (岩波現代文庫)

 

 

物語としてのケア―ナラティヴ・アプローチの世界へ(野口裕二 著)

いわゆる「ナラティブ・アプローチ」についての体系的で分かりやすい入門書。人は数字や理論、ましてや制度や法律によっては動かない。

その人の持っている固有の物語によって突き動かされいくものであるという「ナラティブ・アプローチ」の立場をわかりやすく解説している。人間への理解が深まるとても有益な一冊だった。

物語としてのケア―ナラティヴ・アプローチの世界へ (シリーズ ケアをひらく)

物語としてのケア―ナラティヴ・アプローチの世界へ (シリーズ ケアをひらく)

 

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My Best Books 2016(妹尾昌俊)

まんがで知る教師の学び これからの学校教育を担うために(前田康裕 著)

本書では小学校を舞台に、教師が先輩や同僚、子供たちから学び、成長していく物語がまんがを通じて語られる。リフレクションを通じた自己改善、授業観を磨くこと、タイムマネジメント、教師の未来設計など、大切な考え方を物語の中でとても具体的に考えることができる。

senoom.hateblo.jp

一流の狂気 : 心の病がリーダーを強くする(ナシア・ガミー 著)

心の病気への認識を大きく改める必要を痛感した。なぜなら、本書では精神的な病だからこそ、人は強くなれるところもある、というのだ。

リンカーン、ルーズベルト、チャーチル、キング牧師、ケネディら、誰もが知るこれらの偉人は、鬱、躁鬱もしくは気分高揚性パーソナリティ(軽度の躁)を患っていた可能性が相当高いことを医者でもある筆者はさまざまなエビデンスから診断する。

心の病が人を強くしたことを述べる非常に面白い一冊。

senoom.hateblo.jp

GRITやり抜く力(アンジェラ・ダックワース 著)

偉業をなし遂げるには何が必要か。それは才能よりも「やり抜く力(Grit)」であり、その「やり抜く力」というのは伸ばしていくことができる、という本書。

アメリカの教育政策にも大きな影響を与えているという。学校教育で育むべきものは何なのか?学力テストで測れることだけに注目している一部の方でなくても、ぜひとも読んでいただきたい一冊。

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★★★それぞれの個性が出る紹介でした。
   このうち一冊でもピンときたら手に取ってみてください。★★★