Books for Teachers

学校教育をよりよくしたいと思う方、そして現場でがんばる先生たちにおススメの本を紹介します。

おーい!おーちゃん! 自閉症の弟と私のハッピーデイズ

おーい!おーちゃん! 自閉症の弟と私のハッピーデイズ(紹介:斎藤早苗)

おーい!おーちゃん!―自閉症の弟と私のハッピーデイズ

おーい!おーちゃん!―自閉症の弟と私のハッピーデイズ

 

「障がい児」にではなく、「おーちゃん」に接してほしい

著者の二人は、姉弟だ。弟のおーちゃんには障がいがある。

ずっと一緒に成長してきたお姉ちゃんがおーちゃんを見つめる視線は、とても温かい。

お姉ちゃんだけでなく、お母さんやお父さん、その他たくさんのおーちゃんのまわりにいる人たちが、言葉でうまく表現できないおーちゃんの思いを汲み取ろうとしながら接している様子が、文章から伝わってくる。

おーちゃんの作品はとても素敵だし、お姉ちゃんの4コママンガもクスッと笑えて、ほんわかほのぼのとした気持ちがあふれてくる。

よい本に出会えた。

せっかくなら「障がい児」にではなく、「おーちゃん」に接してほしいです。くれぐれも「知的障がい」や「自閉症」というカテゴリーの名称をそのまま本人に張り付けるのはやめてほしいと思います。このような名称は、その人の一面を説明するために使う、便宜上のものでしかありません。(P.80)

 

おーちゃんは障がいがあるけれども、ゆっくりではあるがおーちゃんなりの成長をしている。

お姉ちゃんは、そんなおーちゃんのそのままの姿を見てほしいと言う。

障がいの名前はあくまでも便宜上のカテゴリーであって、そこにいる人たちは一人ひとり個性があって違う人なんだよ、というお姉ちゃんの言葉にハッとさせられた。

それはわかっているつもりでいるのだが、私は、つい「障がい児」というカテゴリー分けをしてしまう…そんな自分を恥ずかしいと思った。

 

「いろいろな人がいる」という当たり前のことについて

最近注目されている「インクルーシブ教育」では、障がいの有無にかかわらず、誰もが地域の学校で学べることが求められている。

子どもたちが多様性を尊重できるように、大人である私たちも、「いろいろな人がいる」という当たり前のことを忘れてはいけないなと思う。

おーちゃんのような障がいのある子を学校にいれることは、やっかいな問題を起こす原因、やっかいのタネだ、と考える人もいると思います。(しかも、会う前から)

確かに、そういう子はどこか言うことを聞かなかったりしてやっかいかもしれません。周りにいる人は驚くかもしれません。でも、そんなトラブルが起きたときは、「じゃあ、どうしたらいいのか」を友達、先生、家族の中で話し合うのです。そこで、解決策が発見できたり、ルールをきめられたりできたらそれはすごいことです。(P.100)

 

しかし、実際は、障がいがある人やそうではない人が一緒にいる、という環境はそれほど多くない。

私が子どものころもそうだったし、わが子の通っていた学校でも、積極的に障がいがある子とかかわりが持てるような環境ではなかった。

だから正直言って、どう接したらよいのかわからない。

分からないということは言い訳でしかないけれど、せめて学ぶ機会があるといいのにと思ってしまう。

おーちゃんがお姉ちゃんと同じ学校に通っていたように、子どものころから、「いろんな人がいて当たり前」の環境にいれば、子どもたちは自分たちで考え、工夫し、助け合えるようになるのではないか。

 

大人はすぐに「特別な配慮が必要になる。余計な仕事が増える」というマイナスの見方をしてしまう。

「いろんな人がいて当たり前」の環境になれば、どの子もそこにいていい。どの子にも居場所ができる。安心できる場所になるだろう。

そうなるといいな。

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斎藤 早苗(さいとう さなえ)

愛知県在住の3人の子どもたちの母。頼まれると断り切れない性分で、幼稚園から中学校まで、何度もPTA活動に参加。小牧中学校PTA元会長。小牧中学校校長(当時)の玉置崇氏との共著に『「愛される学校」の作り方―悩める校長とPTAを救う!実践とノウハウ』がある。

 

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